【両親へ】我が子がガンになりまして
ガンも今や早期発見や適切な治療により根治が目指せる時代だと誰かは言った。
それでもまだまだ命を落とす人がいる。
それでも怖い病気だと世の中の人は言う。
それでもガンになる人は増えている。
医療がどんどん進歩していても、世間一般的には未だにガンという病気は必ず1度は死を連想させ、再発を繰り返したり、治療もツラいというイメージは全く覆らない。
ガン=死
とくに、親世代(50代以上)はそのイメージがより一層強いのではないかと肌感で感じる。
私がガンだと分かったのは29歳。
上に兄弟が居るので私の両親は60代前半。
自分の身を案じなければならない年齢の親に自分がガンであることを告げるのには、少しパワーが必要だった。
父親はそもそも健康体とは言えない状態で、私が小さい頃から不調をきたしていたし、母親は病気しない元気な人だったがやはり年齢とともにガタがきているようで。
なにより両親はとても心配性が故に、私がガンになったとでも聞けば卒倒するのではないかとこっちが心配になった。
先程の内診でガンだと言われたまるる。
これからMRIやCTをする前にすこし時間があったので、両親に電話をすることに。
ガン検診に引っかかって今日のこの日に精密検査を受けに来たことは事前に話をしてあった。
―――
「あっ、お父ちゃん?」
『お〜、検査どうだった?』
「残念ながらガンやったわ〜(笑)まあいまからまたMRIとかCTとか色々検査するんやけど暇やったけん電話してみたんよ(笑)(笑)」
『あ〜、、、、え〜、、ガンかぁ、、、ステージはまだわからんの?』
「あ、それはね!まだわからん☆」
『あ〜もう去年から事故したり、色々あってから次はお前か....もうこんなことばっかりで次はお前になんかあったらどうすれば....』
父親はあからさまに落胆した。
電話の向こう側には母親もいたようで、母親にもそのことを伝えていた。
それでも私は努めて冷静に。明るく。いつもと変わらない元気で騒がしい私で電話をしたつもりがそれが無理しているように聞こえたのだろう。
父親もハッとしたのか、いつも明るく冗談ばかり言う父親らしい調子を取り戻して、普段通りふざけて下ネタを飛ばしてきたり笑いあったりした。(うちの家庭は下ネタ言い合うこれが普通www)
なんやかんや
散々ふざけ倒して、最後に
『まぁ、頑張れ。家族がいるから大丈夫だ。』
「おう!ありがとう!流石に親より早く死ねんからなぁ!(笑)ぼちぼち検査に戻るわ♪」
―――
いかにも、私たちらしい感じだった。
常時ふざけるけど最後はいつも真面目。私の過去にはたくさんの闇があったけど私とちゃんと向き合ってくれていた自慢の両親だ。
今回も、しっかりと受け止めてもらった。
実際の親サイドの気持ちは私には分からない。
当事者と、支える側。
物理的に傍にいようがいまいが自分の家族がガンになるという事実は予後のことも含め大きな試練となって立ちはだかる。
ガン患者を見守る家族は当事者とはまた違う苦しみがあるのだろうと思う。
あの時、私の両親はどう思ったんだろう。
娘からガンだと告られた両親は電話を切ったあと2人で何を話し合ったのだろう。
親の気持ちは計り知れない。
私の想像以上に両親は悩み苦しみ、我が子を苦しめる事になるガンという病気をさぞかし恨んだだろう。
しかし、私自身もまだこの時には治療方法も確定していなかったのでホントの辛さを知ることなくこの日を終えた。
〜つづく〜